今井の地名は、歌舞伎にも登場する木曽義仲の家臣・今井兼平の所領であったことに由来すると言い伝えられています。今井城址は、二俣川へ向かうバス道路の右手に広がる丘の上にあります。バス停“金剛寺前”の先にある小さな駐車場の横の細道を登っていくと、階段上に稲荷の社と「今井城址」と書かれた石碑があり(昭和57年建立)説明文が彫られています。
説明によると「城址は室町時代初期に築城」とありますから、兼平没後150年以上経ってからのものです。規模は「標高87メートルの尾根上に南北300メートル、東西200メートル」で、石碑はその南端に空掘をはさんで砦が築かれた所です。
この砦跡には、城山稲荷のほか西暦1304(嘉元2)年板碑が残っています。板碑は後に供養塔や墓石に発展するもので、日本人の中に仏教が定着する道筋を形で残しているものです。室町幕府成立より更に34年前で県下でも最古のものではないかと言われています。
また昭和30年10月稲荷横のつげの木の下から、常滑焼の大カメに入った約百貫の古銭が掘り出されたことも記されています。この辺りは神奈川から川島・市ノ沢を通り品濃に抜ける鎌倉古道の道筋で、バス道路をはさんだ今井川にかかる「鎌倉橋」にその名が残っています。
城址に登る道は入口がわかりづらく、私有地なので、見学の場合配慮が必要と思われます。