日本共産党は「共謀罪」許さない。日本共産党作成のプラスターとビラのご紹介
神奈川
いわゆる共謀罪新法案の国会提出に反対する会長声明
2016年12月09日更新
- 政府は,過去3回に渡り,共謀罪規定を含む法案(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部改正案。以下,「旧法案」という。)を国会に提出したが,市民の強い反対で廃案となった。共謀罪は,犯罪の実行の着手に至らない「共謀」それ自体を処罰の対象とするもので,「行為」を処罰するわが国の刑法の基本原則に反するものであり,その構成要件も不明瞭であって,罪刑法定主義にも反すると言わざるを得ないものであった。
今般,報道機関は,政府が,テロ対策の一環として,旧法案を修正した法案(以下,「新法案」という。)をまとめ,第192回臨時国会への提出を検討していると報じた。その後2016年9月16日,政府は臨時国会への法案の提出をひとまず断念したと報じられた。
しかし,政府は,来年の通常国会へこの新法案を提出する可能性があり,予断を許さない状況である。 - 報道によれば,新法案は,「組織犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」を新設し,その略称を「テロ等組織犯罪準備罪」とした。旧法案において,適用対象を単に「団体」としていたものを,新法案では「組織的犯罪集団」とした上で,その定義について,「目的が長期4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」とした。さらに,犯罪の「遂行を2人以上で計画した者」を処罰することとし,その処罰に当たっては,計画をした誰かが,「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件を付した。
政府は,これらの変更点につき旧法案に対する批判に配慮したものであるとしている。
しかし,その内容は,以下に指摘するとおり,旧法案の有する危険性と何ら変わるところがない。- 新法案の「計画」とは,旧法案の「共謀」の言換えに過ぎない。処罰要件として加わった「準備行為」については,「その他の準備行為」という形で記載され,資金の取得等は例示列挙に過ぎないことになり,予備罪における予備行為のようにそれ自体が一定の危険性を備えている必要もない。「準備行為」の概念は,あいまいかつ広範であり,これにより処罰対象が限定されているとは到底言えず,罪刑法定主義の観点からも問題がある。
- 新法案では,適用対象が「組織的犯罪集団」とされ,その定義は,「目的が長期4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」とされているが,法定刑長期4年以上の懲役・禁錮の罪の数は,旧法案でも問題となったとおり,600を超える。「組織的犯罪集団」に関する捜査機関による法律の解釈によっては,摘発される対象が拡大する危険性が高い。 以上のように,新法案は,旧法案の名称と要件を変えたという体裁を取りながら,その危険性は,これまで廃案となった旧法案と何ら変わるところがない。
- 加えて,今般,通信傍受の対象犯罪の拡大等が刑事訴訟法改正に盛り込まれたが,これらと新法案の「テロ等組織犯罪準備罪」とが結びつくと,テロ対策の名の下に市民の会話が監視・盗聴され,その市民の会話が同罪により摘発の対象となる可能性があり,憲法の保障する思想・良心の自由,表現の自由,通信の秘密及びプライバシーなどを侵害し,深刻な萎縮効果をもたらすおそれがある。
- 新法案は,旧法案と同様,刑法の基本原則を否定するものであり,罪刑法定主義にも反するものであるから,当会は新法案の国会への提出に反対する。
2016(平成28)年12月8日 神奈川県弁護士会 会長 三浦 修