森友文書改ざん疑惑 ゼロ回答 国会と国民を愚弄
「捜査対象になっている」「捜査に影響を与えないように」―。学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地取引に関する文書の改ざん疑惑をめぐり、参院予算委員会で調査結果を報告するよう求められていた財務省が6日、大阪地検から同省が捜査を受けていることを盾に取り、真相解明を拒む「ゼロ回答」の文書を示しました。国会と国民を愚弄(ぐろう)する憲政史上、類をみない事態へと発展しています。
なぜ改ざんを疑われるのか
消えた?「特例」「価格提示」
(写真)財務省が作成し、国会に提出した国有地取引の決裁文書(個人情報は黒塗りにしました)
問題の文書はどう改ざんされた疑いがあるのか―。
国会で改ざん疑惑が指摘されている文書は二つです。ひとつは2015年5月に財務省近畿財務局と国有地(大阪府豊中市)の貸し付け契約を結んだ際に、省内で決裁をとるための文書です。
もうひとつは、2016年6月に国有地の売却契約を結ぶにあたり作成された省内の決裁文書です。いずれも、昨年2月に国有地取引疑惑が発覚して以降、国会に提出されています。
国会に提出された貸し付けの決裁文書には、「調書」と題して、取引の概要や経緯が12ページにわたり記されています。
朝日新聞(3日付)によると、契約当時の調書には「特例的な内容になる」という内容がありました。ところが国会に提出された文書からは消えているというのです。
国有地の取引は売却が原則です。それを財務省は学園に資金がないため、10年定期借地した後に売却する貸し付け契約を結びました。
当時、学園前理事長の籠池泰典被告=詐欺罪で起訴=は、自民党の有力議員にも援助を求めていました。日本共産党の小池晃書記局長が入手した自民党の鴻池祥肇参院議員事務所の面談記録によると、籠池被告は、頻繁に鴻池事務所を訪ね、「賃借料をまけてもらえるようお願いしたい」と頼んでいたのです。
(写真)答弁する佐川宣寿理財局(当時)=2017年3月24日、参院予算委
国会では学園との契約が、“特別扱い”だとして財務省が何度も追及されました。昨年2月24日の衆院予算委員会では、当時の佐川宣寿理財局長(現、国税庁長官)が、「すべて法令に基づいて適正にやっている」などと答弁。あくまでも特例ではない、という姿勢を貫きました。
もし契約当時に財務省が「特例」と認識していたならば、佐川氏の答弁と整合性が問われます。
貸し付け契約をした約3カ月後の2015年9月5日には、安倍晋三首相の妻、昭恵氏が、学園が国有地に建設予定だった小学校の名誉校長に就任します。
この後、学園の“特別扱い”はさらに加速します。
2016年6月には、国有地に「新たなゴミ」が埋まっていたことを理由に約8億円の値引きをうけ売却契約を締結。異例の値引きだけでなく、金額まで非公表にしていました。
前出の「朝日」によると、売却契約をした際の決裁文書にも書き換えがありました。契約当時の文書には、「学園の提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」という文言がありました。それが国会提出の文書からは消えていたとしています。
価格提示について、佐川氏は昨年3月15日の衆院財務金融委員会で、「価格について、こちらから提示したこともないし、先方からいくらで買いたいといった希望があったこともない」と述べています。
日本共産党の辰巳孝太郎議員は参院予算委員会(5日)で、こう指摘しました。
「なぜ消されたり、書き換えられたりしたのか。森友学園へ便宜を示す文言だからではないか。とりわけ佐川氏は価格提示をしていないと国会で答弁しているが、それに合わせて改ざんしたのではないか」
国政調査権と捜査は「車の両輪」
財務省の言い分 通用せず
(写真)2014年3月に初めて対面した際に撮られた安倍昭恵氏と籠池夫妻の写真(昭恵氏のフェイスブックから)
国会は、国民を代表する国権の最高機関であり、立法とともに政府行政を監視する役割をもっています。しかし、財務省は森友疑惑をめぐって、二重三重に国会の調査権限を踏みにじってきました。
佐川前理財局長は、国会審議で「交渉記録はない」「価格について、こちらから提示したことも、先方からいくらで買いたいといった希望もない」と強弁。ところが、「ない」といったはずの文書が見つかり、財務省が森友学園と価格交渉をしていたことを示す音声データも新たに発覚しました。国会で虚偽答弁を繰り返してきた事実は明白です。
重大なのは、そうした背信行為を重ねた財務省が国会に提出された、森友学園との国有地貸付、売却契約の決裁文書という公文書まで改ざんしていた疑いが浮上していることです。事実であれば、「公文書の偽造という犯罪行為の可能性があり、しかも国会と国民を欺いたことになる。内閣全体の深刻な責任が問われる」(日本共産党の志位和夫委員長)重大問題です。
国会が憲法62条で定められた国政調査権を十分に使って、自ら真相解明に乗り出すことは当然の責務です。
財務省は、大阪地検による捜査を理由に、改ざん疑惑に関する一切の説明を拒んでいます。しかし、これは国会が国政調査権を発動して真相解明することを妨げる理由にはなりません。
かつて首相が外国の航空機会社からわいろを受け取り、「首相の犯罪」と問題になった1976年のロッキード事件では、ロッキード問題の真相解明、調査特別委員会の国会設置などとともに、国会が「政治的道義的責任の有無について調査する」という合意(76年4月21日)を結びました。検察が取り組むのは、刑法上の刑事責任に限られますが、この合意はそれにとどまらず、政治的道義的責任を含めて国政調査権を行使し、究明にあたったのです。
これまで隠ぺいを繰り返してきた財務省に真相解明の調査を委ねることはできません。司法当局が厳正な捜査を行い、関係者の刑事責任を問うことは当然ですが、それにとどまらない政治的道義的責任を国政調査権で調査する必要があります。国政調査権と司法の捜査を「車の両輪」として真相解明を行うことが求められています。(日本共産党中央委員会 HPより)